ぼくを憐れむうた

ぼくを憐れむうた

日々の雑記や音楽のお話

ここは ぐちの はかば


お釣りをちょろまかされたコンビニが潰れた。

「俺はそもそもあいつのことあんまり好きじゃないんだよ!!」

土砂降りの中、先輩が喚く。

「まぁなー、俺もわかるよ。ムカつくもんなァ」

もうひとりの先輩がビシャビシャと足元の水を蹴って前に進みながら慰める。

飲み会の最中に酒が切れて買い足しの最中、ぼくらは先輩の愚痴を聞いていた。

向かうコンビニはいつものあのコンビニ。夜は外人しか店員のいないあのコンビニ。

 

 

「さてと…」

夕暮れの中、同期が当たり前のように缶ビールを買ってプルタブを押し込んだ。

カシュっという音が鳴り響く。

「ちょい!まだ夕方だぞ!」

ぼくのツッコミに同期はニヤリと笑ってビールをごくごく飲み始めた。

「カーッ!授業サボって飲むビールはうめぇわ!」

バックにはいつものあのコンビニ。昼はおばちゃんがシフトに入ってるあのコンビニ。

 

 

「ひどい目にあったなァ…」

「台風の日に出歩くもんじゃないですよ…」

先輩と二人、なぜか台風の日に外をフラフラしていて、全身ビショビショになって煙草を買いに行った。

ないよりマシと思ってハンカチを買ったが、何の役にも立たなかった。

「はァ…もう朝だな」

「なんでよりによって今日こんな出歩いてたんですかねぼくら」

台風の日もやってるいつものあのコンビニ。台風でも外人が出勤してるあのコンビニ。

 

 

「辛いわ…」

「だから言ったじゃんよ…」

イートインコーナーで同期と激辛カップ麺に挑戦したが、お互い未だ半分以上麺が残っている。

深夜のイートインは静かないつものあのコンビニ。でもスープ捨てる場所がないあのコンビニ。

 

 

「では宴もたけなわではございますが…」

飲み会終わり、小腹が空いてコンビニへ行って飯を食った。宴もたけなわどころか、朝日が登っている。いい加減解散ムードにしたいぼくは小声で解散を呼びかけた。

「マジでコンビニ朝日解散してると体ぶっ壊れそうだから辞めたいんだけど」

同期がだるそうに呟く。

この頃の飲み会は毎回朝日が登るまで俺の家で飲み明かしていた。俺はもっと早く解散したかったが、寂しがり屋が多くて飲み会が長引きに長引いた。

「じゃあもっと早く帰れや!!」

ぼくの半ギレの怒号が響くのは早朝、いつものあのコンビニ。東から登る太陽が妙に綺麗に照らすあのコンビニ。

 

 

「空腹だといっぱい買っちゃうんです」

バイト先の子が恥ずかしそうに大量に買った弁当や惣菜を箸でつつく。

「わかるけど…寿司弁当と牛丼に惣菜て…今全部食べるきですか?」

2.3口弁当を食べたバイト先の子が満足そうに頷く。

「もう満足です!家鳴りさんいりますか?」

変な弁当が多かったいつものあのコンビニ。同期の好きなシュウマイ弁当が置いてあったあのコンビニ。

 

 

毎日のように飲み会後に寄っていたあのコンビニ。

試験前夜に夜食を買いに行ったあのコンビニ。

授業のプリントを死ぬほど刷ったあのコンビニ。

二日酔いで吐き気を我慢しながらポカリを買いに走ったあのコンビニ。

深夜の外人店員にお釣りをちょろまかされたあのコンビニ。

煙草の番号を言う前から店員が煙草に手をかけるようになったあのコンビニ。

 

そんな”あのコンビニ”。先程酒を買いに行こうと向かったら、潰れてました。丁度ぼくが就活で出払っていた日が閉店の日だったそうです。

ここに書ききれない程の時間をあのコンビニで過ごしました。

別に店員と仲が良かったわけでもないし、滞在時間にしてみたら大したこと無いかもしれないけど、他のコンビニが出来る前や、休学後は特に毎日のように利用していました。ぼくの大学生活の中に欠かせなかったわけです。

そんな超重宝していたコンビニが潰れました。

ぼくは留年しているので特に長期間利用していたわけなんですが、そんなぼくも恐らく今年度で卒業。

節目なだけに少しだけ、何か縁を感じてしまいます。

あのコンビニが無けりゃここまで…なんてことはないかもしれませんが、あのコンビニには大変お世話になりました。

 

場所ってのは奇妙なもんで、従業員と仲が良かったわけでもなしに、愛着が湧いてしまいますね。

きっと大学生活を思い出すと、あのコンビニも思い出すと思います。

いつものあのコンビニ。朝焼けも夕焼けも似合うあのコンビニ。