ぼくを憐れむうた

ぼくを憐れむうた

日々の雑記や音楽のお話

ここは ぐちの はかば


サイコ

先日、先輩に花見に誘われた。

それで終わりかと思ったら、夜も飲もうと誘われた。

別に良いのだが、一番面倒な他の人への飲み会への誘いもぼくに任された。

で、当日。

ぼく「いやぁお疲れ様です」

先輩「お疲れー」

後輩「お疲れ様です」

後輩B「お疲れ様です」

先輩「…」

後輩「…」

後輩B「…ズズッ(酒を飲む)」

 

喋れや。

まあ後輩は突然誘ってしまったのもあるが、先輩は喋れや。お前の要望でお前の希望通りの人を集めてやったんだぞ。スマホ触んな。

 

ぼく「そういえば、ちょっと前に…(てきとうに最近あったしょうもない話)」

先輩「www」

後輩「w」

後輩B「…ズズッ(酒を飲む)」

 

喋れや。

何回ぼくが「そういえば、」って話を切り出したか覚えてない。つまり全然盛り上がらない。

まあ、卒業したOBと現役生では中々共通点も無いのもわかるが、ぼくはなるべく全員にわかるような話題を提供してやってんだから乗っかってこいや。特に先輩。お前が言い始めたからこの飲み会始まったんだぞ。てかスマホ触んなっつってんだろ。

あと後輩Bはいつまで同じグラス飲んどんねん。もう酒入ってねぇだろ。次酒を音立てて啜ったら原型わからなくなるまで殴るからな。

 

そんな感じで、久々にサワーの味を感じないくらい冷や汗をかく飲み会に参加させられた。

先輩に奢ってもらったので文句を言える立場じゃないのだが、飲み代以上にぼくはあの場で必死で話題を紡ぐ努力をしたんだ!それも孤独に!あんたがスマホばっかいじってるせいでな!

 

この先輩、度々こういった不可解な行動をとる。

今回のように大学付近に飲みにきて、人を集めさせて、飲み会を開いて自分はほとんど話さずにスマホをいじる。気を使って話しかけてもスマホを手放さない。まぁ多人数なら他の人次第でどうにかなるのだが…

以前も何度かサシ飲みに誘われた際に、向かい合って腰掛けているのにもかかわらずスマホを弄り倒すことも多々あった。

おい。おい!2人しかいねぇんだぞ?何?ぼくの話がそんなにつまんないのかしら?じゃあ次の店探すなや!帰ろうや!なんで二次会考えてんねん!”後輩と酒を飲んでた”って次の出勤で同僚に友達いっぱいいるアピールしたいんか?じゃあもう”後輩と酒を飲んでた「体」”でいいだろ!体で頑張れ!負けるなよ!

まぁ先輩だし、お世話になっているシーンも度々あるので直接的に文句は言えないのだが…

それでも帰り道に「楽しかったねぇ!」とか言われると呆れるのを通り越して、まるで心霊現象を体験したかのようなおぞましさを感じる。最早サイコだ…楽しかったって…楽しかったの…?あれが…?なんで…?どうして…?えぇ…?こわ…

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もうぼくは映画「サイコ」のシーンのように叫びちらしたいのを我慢して、歯を食いしばって「そうですね!」と言うのが限界だった。

 

人に会うっていうのは、人によって様々な動機や効用があると思う。しかし久々の再会ともあれば他愛のないような雑談ですら楽しいのではないだろうか。だが楽しいと思えるのは会話があったからこそ、でもある。

つまり何がいいたいかと言うと、話の中身は重要でないにせよ、人と会うならば会話するという行為自体が目的になるわけであって、会うことは手段に過ぎないというわけだ。会うために話す、のではなく、話すために会う、でないとおかしいだろう。

であるのにも関わらず、かの先輩はその手段と目的が逆になっているような気がする。重要なのは会った事実で、その中身はどうでもよい、と考えているのではないだろうか。そうされると困るのは周りの人間だ。会いに来てくれるのは嬉しいが、いざ喋ってみれば興味関心を一切向けてくれない。なのに別に帰るわけでもなくその場に居座る。

 

仮に自分がレストランを経営していたとして、客として入ってきた人間が席にもつかずにレジ前でずっと佇んでいたら怖いだろう。そんな客が居たらまずこの世のものか疑ってしまう。

それと同じことを先輩は……

 

ん?

確かにお金を払ってはくれていたが、会話にも極端に参加していない。

ぼくが見たのはほとんどスマホを弄っている姿ばかり。

ん?

当たり前ではあるが、彼に触ったりもしていない。

何故か彼は帰り道頑なにコンビニに入ろうとしなかった。

翌朝(うちに泊まっていった)もコンビニに執拗に入りたがらなかった。

そういえば、春とは言えやけに薄着だったような…

ん?

 

何かがおかしい…

まさか…

い、いやそんなはずは…

 

でも確かに…

後輩たちが先輩に話しかけていたのも見ていない気がする…

後輩たちへの連絡は全てぼくがしている…

先輩がいなくても居酒屋での会話は全て成り立っていたかもしれない…

 

もしかして…先輩が見えていたのはぼく………だけ………?

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(※サイコは心霊映画ではありません。)