宮本浩次ソロ活動始めるってよ。
「椎名林檎ってすげえよな」
久々に会った知人がそんなことことを言っていた。椎名林檎と言えば2018年にエレカシ宮本とのコラボ楽曲を発表しているが、それより前にはウルフルズのトータスとコラボ楽曲を発表している。彼(知人)曰く宮本とトータス、それぞれの色に合わせた楽曲を作って魅力を引き立てるのが上手い、とのこと。
確かにその通りだと思う。
椎名林檎とトータスの楽曲「目抜き通り」と椎名林檎とエレカシ宮本の楽曲「獣ゆく細道」は作風が全く異なり、椎名林檎がそれぞれ2人の為に作った楽曲だ。だから仮にボーカルを入れ替えて演奏しても上手くいかないだろう。
2018年は、まずこの椎名林檎とエレカシ宮本のコラボ楽曲「獣ゆく細道」が発表され、次に東京スカパラダイスオーケストラとエレカシ宮本のコラボ楽曲「明日以外全部燃やせ」が発表された。
発表された当時のぼくの心境としては、有名とは言え今の若い世代にはエレカシの知名度は低いだろうによくスポットライトが当たったな、という驚きと同時に、嬉しさもあった。
というのも、エレカシ宮本は歌が上手い。とても上手い。日本で最も過小評価されているボーカリストの1人である。そんな宮本が林檎ちゃんやスカパラから指名を受けるのは、まるで宮本が世間にも認められたような気がしてぼくもまた嬉しかったのである。
エレカシとの出会いは高校の頃であり、この世にはBUMP OF CHICKENしかバンドが存在していないと思っていたぼくにとって衝撃的なバンドであった。「今宵の月のように」「悲しみの果て」といった往年の名曲たちから聴き始め、「奴隷天国」「ハロー人生」なども通り、「花男」「友達がいるのさ」などにも出会えた。
特に「友達がいるのさ」は、ぼくを大いに救ってくれた楽曲の1つであるように思う。
上記の楽曲はどれもエレファントカシマシとして演奏されたものである。
しかし、つい先日、宮本のソロ活動が発表された。
プロデューサーに小林武史を迎え、ドラマ「後妻業」の主題歌として「冬の花」という曲を歌うそうだ。
エレファントカシマシは中学高校での友人で結成されてデビューしてから30年を越えるキャリアの持ち主だ。そしてデビューから一度もメンバーが変わっていない。
レコード会社から契約を打ち切られた時も、絶望を歌ったアルバム「生活」を出した時も、どん底から這い上がってきた時も、いつも同じ4人で演奏してきた。
宮本の独裁的なバンドの取り仕切り方を見るとどうしてバンドメンバーが悲鳴をあげないのか不思議ではあるが、それも外からは見えないバンド内だけの信頼関係があってこそ成り立つものなのだろう。
そんな宮本がソロ活動を始める、という話は去年からなんとなく聴いてはいたが、ついに本格的に活動し始めたことに対してはなんとも言えない気持ちだ。
それはエレファントカシマシという宮本の最大の武器を手放して勝負するということであり、その目的がよく見えないのだ。
例えば上で散々ベタ褒めした椎名林檎とのコラボ楽曲。これは、先程も書いたように林檎ちゃんと宮本でなければ歌えない。つまり替えがきかない楽曲であることは聞けば一目瞭然ならぬ一聴瞭然であるが、スカパラの楽曲はどうだろう?奥田民生とスカパラのコラボ楽曲もあるが、それと交代したとして支障があるだろうか?
まぁスカパラというのは特徴的なバンドなのでバックバンドに意味を見出せばその限りではないが、じゃあそれをソロの話に変えたらどうなるだろうか?
何が言いたいかと言うと、ソロ活動でなければならない必要があるのだろうか?ということだ。
小林武史をプロデューサーに迎えたということは、バンドサウンドからかけ離れたストリングスが活きたバックサウンドになることは予想ができるが、あえてエレファントカシマシの面々を外して、あるいはエレファントカシマシから抜けて、宮本が単独で歌わなければならないほどなのだろうか?
すごく意地の悪い見方をすると宮本が"ソロ活動"という見てくれに憧れている感が否めないのも事実だ。
果たしてソロ活動するほどの意味があるのかどうか、というこれより先の議論はソロの楽曲を聞かなければわからないが。
しかし、まあ、こんな所で書いても仕方ないが、宮本浩次よ。あんたは歌手であると同時にロックンロールバンドであるエレファントカシマシのギターボーカルであることを忘れるなよ。あんたはロックバンドのボーカリストなんだよ。
Mステに出た時、椎名林檎のバックダンサーの横で暴れていたけどTwitterで馬鹿にされて笑われていたよ。紅白はぼくも見たが笑っちまった。
でも、ぼくはあんたがエレファントカシマシのステージで誰よりもかっこよく暴れてるのも知ってる。あんたが歌えば世界で一番かっこいいのも、死にたい気持ちすら諦めさせてくれることを知ってる。それを知らずしてあんたのことを馬鹿にする奴らがいるのはとても歯がゆいことだ。
だからやっぱりあんたはエレファントカシマシとして演らなきゃいけないんだよ。
今回のソロ活動の意図は読み取れないけど、エレカシを巣と据えて活動してほしい。
いつまでも最高にかっこいいロックバンド、エレファントカシマシのボーカルであってほしい。そう願ってやまないよ。また、"東京中の電気を消して夜空を見上げてえ"と歌ってくれることを信じて記事を〆たいと思う。