ぼくを憐れむうた

ぼくを憐れむうた

日々の雑記や音楽のお話

ここは ぐちの はかば


友達がいるのさ

明日、引っ越しである。

なのに荷造りも終わってないぐちゃぐちゃの部屋でこれを書いている。

 

先程、先輩と飯を食ってきた。

ぼくは昼飯が腹に溜まっていたためケーキだけ食って帰ってきたのだが。

 

何気ない世間話。

特にグダグダになることもなく、かといって過度に盛り上がることもなく、飯が終わってしまった。

 

まるで明日からも今まで通り会えるかのようだ。

 

先輩とはぼくが1年生の頃からの付き合いだ。付き合いの長さで言えば、サークルで1,2を争う。

 

ぼくが復学を決めたのも先輩のおかげだ。

ぼくが復学してから孤独にならずに済んだのも先輩のおかげだ。

だから、ぼくが卒業できたのも先輩のおかげだ。

勿論、他にも色々な人の助力があったからこそ卒業できたわけだが、その中でも先輩への恩は非常に大きい。

 

そんなことを少し話してみたが、先輩は笑うばかり。昔話を挙げてお礼を言っても

「そんなこともあったかw」

先輩は笑って煙草に火をつけていた。

 

そんなこともありましたよ。ええ、ありましたとも。

 

 

正直、未だに地元に帰る実感がない。

明日もまたこの部屋で目覚めて、またこの街で暮らしていくような気でいる。

でも大学は単位を揃えきってしまって、先日バイトも終わってしまって、明日は引っ越しだ。もう大学にもこの街にも、ぼくは用事が何もなくなってしまったのだ。

 

 

高校の頃、同じタイトルでブログの記事を書いた。高校時代のブログの最終記事のタイトルだ。

元ネタはエレファントカシマシの名曲「友達がいるのさ」。

 

高校の頃は、卒業式の後、家に帰ってきて部屋で号泣していた。

高校時代の面白いところは、入学して学校に馴染めなかった頃も風呂場で一人で泣いていたのだ。でも卒業式の後の涙は、それとは全く違うものになっていた。

ひどく寂しかったのだ。別に特段仲が良かったわけではないが、それでも明日から高校に行って、いつもの奴らとの中身のない会話が無いことがひどく寂しかった。

 

でも、当時のぼくは卒業に関して

外に友達がいるから毎日出かけてた。
自転車で、時に車や電車で。

そして、高校に友達はいなくなった。
だからもう学校に出かけることはなくなったんだ。
ただそれだけ。シンプルな理由だな。

と述べている。

 

ははは、潔い。さっきまで泣いていたくせに。

 

今のぼくは当時のぼくより割り切りが悪いのかもしれない。

わかってはいるのだが、それでもなんだかイマイチ悲しみきれなくて、イマイチ実感が沸かなくて、ふわふわしている。

だから余計に、なんだかイマイチ割り切れない。

 

高校は3年間だが、それ以上の時間をこの土地で過ごしたからかもしれない。

それに休学時に地元に帰った時にサークルに対して区切りがついてしまっているのも要因かもしれない。

 

とは言え、荷造りをしていれば少しずつ引っ越しが近づいてくる。

 

ぼくはやれるだろうか。

復学後はなんだかんだ誰かしらとはちょいちょい会っていた。一切友人に会わない期間はそうはなかった。

だが、それは大学付近に知り合いが多いことや、ここが立地的に丁度良かったからだ。

 

地元に帰れば状況は一変する。

近くに知り合いはいなくなるし、立地的にも非常に悪い。ぼくの地元に知人が訪れることはまず無いだろう。

であればぼくが足を伸ばす他ないわけだが、バイトも始まれば今までみたいに予定を工面しづらくなる。

 

そもそもバイトだって、ぼくは上手くやれるだろうか。

今までのバイトと全く違う。業務内容自体全然違うし、社員登用もかかっている。

 

 

「がんばれよ!」

先輩との飯を終えてから荷造りをしていたら、先輩からLINEが飛んできた。

そう言えば、かつて先輩が卒業するときも別れ際に励まされた気がする。

ぼくが休学するときも、復学するときも。

 

がんばれ、なんて簡単な言葉だけど、まぁ、そうだな。どうにかするしかないもんな。

 

やっぱりぼくは卒業するわけで、もうこの土地にはいられないわけで。

ならば、やっぱり明日は引っ越しなのだ。

この土地に友達が残っていようとも、ぼくは行かなきゃいけない。高校の頃とは状況が違うから簡単な理屈で割り切れやしないけど、それでも。

 

えー、関係者の方々、本当にありがとうございました。

おかげさまで辛い生活の中でもどうにか楽しく過ごせました。

離れてもきっと友達でいられるから、ぼくは地元に戻ります。

また、機会があれば、いや、機会を作って遊んでください。

これで終わりじゃないですからね。

 

長い間、ぼくの介護をしてくれて本当に感謝してます。ありがとう。それでは。

 

…と、ここで決めてもリアルの誰にも伝わりゃしないんだよなァ…

 

ということで、まぁどうにか、なんとかやっていきます。

さて、明日の引っ越し頑張るぞー!

それでも君は笑い続ける

何事もなかったような顔してェェェェエェェェェェェエ!!!!!!!!!!!!

 

皆様御機嫌よう。明後日が引っ越しなのに部屋が全く片付いていない家鳴りんです。

 

さて、私はこの度何年通ったかわからない大学を卒業いたしまして、地元に戻ることになりました。

それに際しまして、一応大学付近に住んでいる人々にお礼参りをしようと2月上旬から企んでおりましたが、それがつい先日終了致しました。

 

先輩と同期と後輩、それぞれがまだ大学の近くに住んでいる人々がいて、復学前も復学後も大変お世話になったのです。

というのも、やはり留年を続けたツケとして大学内に知り合いはいなくなってゆくわけで、そうなると私生活がすべてひとりぼっちなんですよね。

そういった中で、皆さんが予定を工面してくれてぼくに会ってくれることでぼくは本当の意味での孤独を回避できたわけです。

重ね重ねになりますが、本当にありがとうございました。と、ここで言っても本人らには伝わらないわけだがw

 

少し話が変わりますが、ぼくの地元から大学までは新幹線を使って1時間半、在来線を使えば3時間ちょいかかります。

つまり彼らに原付で会いにいける距離ではなくなってしまうのです。車でもしんどい距離。

ぼくもきっとお金に余裕がない生活を送ることになるし、何より忙しくなると思うので頻繁に大学付近に遊びに来ることはできません。

会おうと思えば会えた人々が本当に本当に遠くなっていきます。

物理的な距離の離れようはもはやどうしようもないのですが、それでもやっぱり寂しいわけで。

 

という話をお礼参りの度に、思わず口から零していました。

 

「まぁ、でも鈍行で3時間でしょ?」

 

先輩は首を傾げながらそう言う。

そう言えば、先輩が卒業したときも、ぼくはベランダで先愚図りながらその先輩にもう中々会えないと嘆いていた。

先輩は県内だからそんなことはないと笑っていたっけな。

 

結果論ではあるけど、紆余曲折を経て結局なんとか会えている。

他の先輩たちもそうである。大学からいなくなることを酷く悲しんだ別ればかりだったが、仲の良い先輩たちとは年に何度も会えている。

 

「まぁ中間地点あたりで手を打とうや」

 

とは言え、と言いかけるぼくを抑制するように先輩は煙草をふかしながら笑っていた。

 

 

「色々ありがとうございました」

 

また別の日、その日飲んでいた後輩との別れ際にお礼を言った。彼には本当にお世話になった。声をかければ飛んできてくれるし、生意気ではあるがぼくのことを気にかけてくれるちゃんと芯の通ったいい奴だったのだ。

 

「まぁ、でも、これで終わりじゃないですからねぇ…」

 

したり顔で後輩はニヤリと笑った。

 

 

また別の日に飲んだ後輩も

 

「いや、これで終わりじゃないですよ!」

 

と少し驚いた表情を見せた後、笑っていた。

 

 

先日スタジオに入った際に泊まっていった後輩とも別れの話になったが、

 

「そうなったら俺があいつを車にのっけてそっち行けばいいですね」

 

と当たり前のように言ってきた。

 

 

ぼくが結構悲観的になっていても彼らは笑っていた。

どうにかなるさ、と。

人の出会いには意味がある、なんて言葉があるが、その真偽はさておいたとしてもあまり悲観的になる必要もないのかもしれない。

お互い汗をかいて働くことになるんだろうけど、まぁ、どうにかなるだろう。

 

友達に関してぼくは、

”久しぶりに会ったとしても昨日会ったかのように話せる”

ことが重要であると定義づけている。

 

であるならば、きっと彼らとは大丈夫な気がする。

先のことなんてわかりゃしないが、今は大丈夫だって思える。それで充分だ。

 

ろくでもない人間に対してここまで言ってくれる人間は中々いないだろう。この感謝の気持ちを言葉じゃ言い表せないけど、本当に、ただただ嬉しい。

だから、来年も、どうかよろしくね。

君はぼくをおおおおおお忘れるからあああああああああああ

何年か前、大学に入学したての頃、ぼくは完全初心者で音楽サークルに入った。

 

動機は単純。ただただモテたかったのだ。

だから第一志望はギター。歌いたい欲求もあったけど、あまり歌に自信がなかったし、バンドのこともよくわからなかったので、とにかくモテそうなパートであるギターを選んだ。

 

「初心者セットのギターはねぇ…すぐガタがきちゃうから、弾くならちゃんとしたやつを第一号として買ったほうがいいですよ^^」

 

自分の初めてのギターを買いに行った時に楽器店の店員にそそのかされて、ちょっと高めのアコギを買った。

一応建前上はアコースティックサークルだったのでエレキではなくアコギを買ったのだ。

 

アコースティックサークルとは言え、ぼくの入ったタイミングはサークル員がアホみたいに増加しており、ドラムとエレキベースとアコギというチンチクリンな編成でバンドをやることが非常に多かった。

しかしぼくは初心者。アコギでリードギターを弾くことになんの疑問も覚えずに音楽活動の楽しさに心躍った。

人と協力して作品を作り上げることはこんなに楽しいことなのか、と、ボーカルである友人の横でギターを弾くための練習を毎日していた。

 

だが、腐ってもアコースティックサークル。先輩たちが力を入れていたジャンルの1つに弾き語りがあった。

「○○さんの弾き語りっていいよね」

「○○さんの弾き語りはかっこいい」

先輩たちや先輩と仲の良い同期はみな酔っ払うと弾き語りの話をしていた気がする。

 

正直、1年生の頃のぼくはその意味がさっぱりわからなかった。

上手い下手とかよくわかんないし、弾き語りなんて1人なんだからバンドの劣化だろwくらいにしか思っていなかった。当時のぼくは痛々しい程バンド厨だったのだ。

 

サークルライブでトリ間際の弾き語り。よく知らない先輩がよく知らない曲をやっている。それを見ながらアクビをぐっと堪える。そんな日々を過ごしていた。

 

来たる3月。大学は卒業モードだ。

どうやら4年生の先輩の卒業ライブなるものがあるらしい。

ぼくは当時の4年生の先輩と全く仲良くなかったが係に入らされていたため嫌々ながら見に行った。

先輩たちが泣きながら演奏している。仲が良かったであろう先輩や後輩も泣いている。ぼくは全然交流が無かったから蚊帳の外だ。

 

だが、蚊帳の外なりに好きだった先輩のバンドもあった。その時のライブの大トリを飾っていたバンドだ。

これは見よう。

だけど大トリは混みそうだからその前から見よう。

大トリのバンドの前は弾き語りだった。

度々ライブで見た先輩の弾き語り。

きっと退屈だろうと高をくくってみていた弾き語り。

 

「では最後に、ユニコーンの『すばらしい日々』をやります。ありがとうございました」

 

すばらしい日々は好きな曲だったので少し驚いた。自分の知っている曲が弾き語りされている。

聞き慣れた歌詞が聞こえてくる。

 

「ぼくらは離れ離れ、たまに会っても話題がない-…」

 

バンドの音源では何気なく聞いていた言葉が、弾き語りによってよりダイレクトに聞こえてくる。

 

「すばらしい日々だ。力溢れ、全てを捨ててぼくは生きてる」

 

歌えるぐらい沢山聞いてきたはずの歌詞の意味が、今更少しずつ理解できてくる。

 

「君はぼくを忘れるから。その頃にはすぐに君に会いに行ける-…」

 

間奏。Eのコードが会場に響き渡る。

 

程なくして先輩の”すばらしい日々”が終わった。拍手が会場を包む中、先輩が控室へと捌けていく。

 

その時の感情を未だに覚えている。

「俺もいつか、この卒業ライブという特別なライブで、この曲を弾き語りとしてやりたい」

心底、先輩の弾き語りを見てそう感じた。

 

ぼくは先輩や目上の人に媚びることのできるタイプじゃないのだが、慌てて先輩の後を追いかけて話しかけに行く。

「弾き語り、すごい良かったです。ぼくもいつか、あの曲やっていいですか?」

今となって考えれば、先輩も感傷に浸りたかっただろうに無粋なことをしたもんだ。案の定先輩にはあしらわれた。

 

この日から、ぼくは”すばらしい日々”に恋い焦がれた。

もちろんバンドも楽しかったし、バンドもかっこいいと思うが、弾き語りのかっこよさにも気づいてしまったのだ。

歌を伝えるならバンドよりも弾き語りの方が確実に適している。ぼくもバンドサウンドとしてでなく、歌として伝えたいことが日に日に増えていったのかもしれない。

 

季節は流れて大学祭。その年は1個上の先輩が卒業する年度だったので、卒業ライブですばらしい日々を演奏しようと企んでいた。

すると、大学祭のライブで突然先輩が弾き語りですばらしい日々を歌い始めた。

 

その時の感情を未だに覚えている。

「や、やられたァ~~~~~~!!!!」

すばらしい日々に興味があるのなんて俺ぐらいだと思っていたァ~~~~~~!!!!

ぼくは演奏を聞いて項垂れてしまった。

先を越されたのが悔しいんじゃない。どうやったって先輩のすばらしい日々に敵わないのが悔しかった。

 

飲み会の帰り道、すばらしい日々を弾き語りしていた先輩の横を歩いていた。

 

「ぼく、あれ、先輩たちの卒業ライブでやろうと思ってたんですよ」

 

恨めしそうに俯いて喋るぼくに対して先輩がケラケラ笑う。

 

「いいじゃん、やれよ」

 

先輩の言葉に少しムッとする。できるわけないだろう。アンタの弾き語り見させられといて、ぼくがやれるわけないだろう。

 

「いや、無理です。だから、先輩が絶対やってください」

 

酒も入っていたので少し強気で先輩にすばらしい日々を押し付けた。

 

「わかった。じゃあお前はくるりの”ジュビリー”やってくれよ」

 

くるりのジュビリー。前回の卒業ライブで先輩たちに演奏した曲だ。ぼくはジュビリーには大して思い入れがなかったが、先輩にすばらしい日々をやってもらうためにそれを承った。

 

あっという間に再び3月がやってくる。

1個上の先輩たちの卒業ライブがやってくる。

去年、一昨年と比べて1個上の卒業ライブというのは感慨深い。先輩たちの中で一番距離が近かったのはやはり1個上だったのだ。

 

ぼくの手番はかなり序盤。約束通りにジュビリーを披露した。

ライブは盛り上がりながら終盤へと差し掛かる。

先輩の手番はトリ間際。先輩は何も言わずにEを鳴らした。

約束のすばらしい日々だ。

上の代は皆仲が良かったが、少し、関係に陰りがあった。すごい良いサークルなので女絡みではない。単純に男同士のスタンスの違いでのすれ違いだ。

そういったことがあったのを知っていたから、或いは、ただ単純にいなくなるのが寂しかったからかもしれない。ぼくは先輩の弾き語りを聞いて、後輩の横で、泣くのが堪えられなかった。

 

「来年、絶対やります」

 

ぼくはそう伝えに手番が終わった先輩のもとへ話しかけようとしたら、舞台では淡々と演奏していた先輩が控室で泣き崩れていた。

ぼくは必ず演奏することを誓って控室を静かに後にした。

 

時を経てついに最高学年。

すばらしい日々は1年生の3月からずっと追い続けてきた曲だ。

ぼくは卒業ライブの前に大学祭で披露することにした。

弾き語りとして出演する直前、

 

「次、家鳴りの弾き語りだよ」

「見よ」

 

ぼくのことを嫌っているはずの女の子たちが会場に入っていくのがチラッと見えた。

 

先輩たちの演奏にどうしても敵わない。サボっていたつもりはないが、歌は下手だしギターの技術も追いつけずにいた。

だがそれでも、チープな言葉ではあるが、この曲に関しては気持ちじゃ負けない。つもりだ。

ぼくはぼくなりに精一杯演奏した。

 

よかったよ、なんて仲の良い同期に褒められたりしたが上手くはいかなかった。やはり先輩たちの演奏を見ていると何したって成功に聞こえない。

思うように行かないなァ、とため息まじりに喫煙所で煙草をふかした。

 

最高学年でありながら、大好きな曲をやれる立場でありながら、やっぱり上手くできない。

そんなモヤモヤがぼくの周辺を支配したまま季節は瞬く間に去っていく。

 

気づけば3月。

ついにやってきてしまった。最高学年としての卒業ライブ。

ぼくはここですばらしい日々を演奏することを夢見てきたわけだが、同時に永遠に来ないでくれたら、とも思っていた。

純粋に同期がいなくなるのが本当に寂しかったのだ。お別れしなきゃいけない。

このライブが終わったら、次の部会から同期は来なくなるんだ。もう二度と、一緒にライブに出演することはなくなってしまうんだ。

誰々の演奏が良かったとか、どこどこのバンドが駄目だったとか、最近の音楽が糞だとか、そんなしょーもないことを話せなくなってしまう。原付で数分の距離ではなくなってしまう。

 

そう、「ぼくらは離れ離れ」だ。

 

歌詞の全てが自分の現状を物語っている。

「ぼくらは離れ離れ」で、「たまに会っても話題がない」し、

「一緒に居たいけれど、とにかく時間が足りない」んだ。

 

ライブ終盤、ぼくの手番がやってくる。

ライブの節々で涙ぐみながらここまでライブを見てきたが、ついにぼくの弾き語り。

3年前から恋焦がれて、夢見たライブでの弾き語りの手番だ。一生来てほしくなかった弾き語りの手番だ。

 

ぼくはギターを握って1曲目と2曲目を演奏した。残すはすばらしい日々のみ。

あまりMCするのは得意ではなかったが、最後だからと色々とおちゃらけながら感謝を述べた。

「では、最後にすばらしい日々をやって終わります」

Eを鳴らす。もう何度も弾いたEを鳴らす。緊張と興奮が襲いくる。

ああ、先輩たちもこんな感じだったのだろうか。練習とぜんぜん違うのだ。最後なのだ。

 

先輩に一方的に約束をした3年前。

先輩に先を越されて曲を託した1年前。

 

歌詞の1つ1つが重くのしかかってくる。

 

ぼくはできるだけ、できるだけ気持ちを伝えるように全力で歌った。

初めは先輩に感化されたことが動機だったが、今じゃ本当に歌いたい曲。どうにか気持ちを伝えるための曲となっていた。

言葉じゃ語り尽くせない同期への思い。好きであり嫌いであった一筋縄ではいかない同期への思い。

泣きじゃくりながらぼくは歌い尽くした。

 

アウトロ、弦が弾け飛んで切れる。

ああ、もう本当に終わりなんだな。これで終わりなんだ。

やっぱり上手く弾けないなぁ。

弦が切れて、なり損ないのEを鳴らして、ぼくのすばらしい日々が終わった。

 

どうにか足を引きずって、控室にも入れずに、ロビーで弦を替えようととギターを置いた。

だがどうにも替えられなかった。

涙が止まらないのだ。

演奏できて良かった、だとか、弾き語りが終わって悲しい、だとか、そんな単純な感情ではなかったと思う。色々な感情が渦巻いて、とにかく涙が止まらなかった。

あんなに人前で泣いたのは最初で最後だと思う。

泣きゃしないだろうと思ってた同期が横に来て号泣している。わけもわからずにぼくも泣き尽くした。

 

こうしてぼくのすばらしい日々は終わった。

 

あの卒業ライブを経て1年以上はすばらしい日々が弾けなかった。自室でギターを手にして、なんとなくすばらしい日々を弾こうとしてもイントロから先に進めない日々を送っていた。

それ程までに特別な曲だったのだ。

最後まで上手く弾けなかったなー、なんて今となっては良い思い出だが、当時のぼくからしたら壮絶な青春の1ページだ。

 

そんなぼくもいよいよ卒業が差し迫っている。

サークルを離れて久しいが、あの頃の記憶は未だに鮮明だ。それ程までに1つ1つが脳裏に焼き付いているんだろう。

 

仕事を始めたらアコギを弾くことはこの先減るだろう。今でさえ、サークルに居た頃に比べて劇的に減っている。エレキの方が楽しいしね。

だから、この先ちゃんとアコギで弾き語りをすることなんたきっと無い。

ついに、本当の最後だということだ。

 

ということで、少し歌ってみました。

もう恐らくアコギで弾くこともないでしょう。

 

 

あの頃よりは上手くなってるだろうか。いや、どっこいどっこいだな。

やっぱり上手く弾けないなぁ。